【本要約】多様性の科学〜成功と失敗を分けるもの

【本要約】多様性の科学〜成功と失敗を分けるもの

今回ご紹介する書籍は22か国刊行の世界的ベストセラーとなった「多様性の科学〜画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織」(著者:マシュー・サイド)です。
読んでみて感じたのは、組織やチームなどという領域ではなく、国家から一人ひとりのサバイバル力まで多様性の力は大きく作用しているという気付きでした。

多様性のある地域は活力がり、異なる結びつきによりイノベーションが起こります。
人生においても多様性は強力な武器となり、その人の可能性を広げてくれます。
逆に多様性を排除することで、視野や発想が狭まり、多様性のある方に淘汰されます。
本書では数多くの多様性の欠如による具体的な失敗事例が紹介されていました。
またなぜ多様性があることで強く、そして成功できるのか?この辺のエッセンスも交えながら全368ページの中から、僕が特に大切だと感じた部分を要約してみました。


多様性の科学

1.序章

創発システムと多様性

アリの巣を理解するには個のアリを見ても一生理解はできない。
木を見て森を見ず同様にズームアウトする事でアリの巣を一つの生命体としてとらえらる。
アリの巣は創発システムであり、アリの個体の単純な和にとどまらない。
人間の脳も同様で神経伝達物質が強く結びつき、相互作用するとこで個々の物質からは予測できない強力で巨大な作用を生み出す。
アリストテレスの言葉にある、「全体は部分の総和に勝る」のだ。

近年では多くの問題を個人ではなく、チームで当たっている。
個人で当たるには複雑化しすぎているからだ。
論文の執筆も個人ではなくチームで共同執筆してるケースがほとんどだ。
その背景にあるのは個の知識よりも集合知をいかすことで、複雑な問題を広くカバーできることにある。

2.画一的集団の「死角」

認知的多様性

アメリカ人と日本人のチームに水槽に泳ぐ魚のアニメーションを見せた結果、アメリカ人は個々の魚の特徴に視点がいき、日本人はより背景や全体(水の色や草木など)に視点が集まった。
アメリカ人は個人主義的であり、日本人はより社会や全体主義である文化的傾向が現れた結果としてこの実験結果として、これまで多く引用されている。

どちらが正解ではなく、どちらか片方の視点が抜けている事の方が問題である。
この二つのチームが一つに組めたら2つの枠組みを合わさり、細部から全体までより包括的に物事を理解できる。
重要なのは異なる見方ができる人を集められるか?だ

予測の研究

アメリカのデューク大学で行われた予測に関する研究では、エコノミスト28,000人による経済予測を分析した結果、正解率1位のトップエコノミストより上位6位の平均正解率が高かった。
複雑な経済予測というタスクにおいては、優秀な1人よりも多様性のあるチームとしての方がパフォーマンスが高かった。

集合知

集合知を得るためには能力と多様性の両方が必要となる。
多様性は単に肌の色や性別の問題ではない。
異なる人種、性別だったとしても、受けてきた教育などが同じであれば結局は考え方は似てくる。
逆に同じ人種や性別だったとしても、軸となる考え方が異なれば(例えば経済学ではマネタリスト派かケインズ派か)それは多様性となり得る。

暗号機「エニグマ」の解読に成功したチーム

第二次世界大戦中にドイツ軍が使用していたエニグマの解読には数学者だけの優秀なチームでは不可能だった。
この解読チームに加えられたのがクロスワードパズルの大会で優勝した人物が招待された。

クロスワードパズルはいわば、そのパズルを作った人の思考を読み取るようなものであり、暗号化した担当者の頭に入り込み、その背景から読み取ることで暗号の解読に大きく貢献した。
数学者ではカバーできない領域をクロスワードパズルの大会で優勝した人物が入ることで多様性のあるチームとなった。

同化現象のリスク

最初は多様性のあるチームでも、組織に長くいくことで主流派や多数派に引っ張られて同化して、結局みんな画一的な考えになるリスクをはらんでいる。

3.クローン対反逆者〜不均衡なコミュニケーション

反逆者集団とクローン集団の議論の違いの違い

反逆者集団(多様性のあるチーム)の議論に参加した人は、お互い意見が違うために、議論が非常に困難で大変であったと感じた。(自分の意見をどう相手に伝えて納得してもらえるかなど)

またチームで出た結論や答えに対して、自分の考え方と異なるためにそれに対して確信を持てない人もいた。
一方でクローン集団(画一化されたチーム)の議論はに参加した人は、似た考えであったため、賛同や肯定されるケースが多く、非常にスムーズで「楽」あった。
また全員が賛成することで出た結論や答えに対して確信を持てた。

集合知をどう活用するか

多様な視点が集合知を高めることを知った。
いくら個人が有益な情報をもっていてもそれが表明され共有されなければ意味がない。
しかし、競合する情報や意見が出たとして、それをどう活用、採用するかの問題もでる。
誰が決めるのか?そもそも1つ絞る必要があるのか?組み合わせるのか?
本書ではその実践としてエベレスト登頂の事例をもとに挙げていく。

エベレスト登頂での悲惨な事故

登山はいわばVUCA(不安定、不確実、複雑、曖昧)な環境で行う活動だ。

刻一刻と変わる山の天気、気温、雲や視界、登山パーティーの位置や各個人の身体的、精神的な状況。
見ている視点も全て違う。

エベレスト登頂においては、経験豊富なガイドリーダーの意思決定が最重視される。
リーダーの判断や意見に従うことは登山者にも入念に伝えられているし、登山者も何度も登頂しているガイドを信頼している。
このような状況下ではリーダー一人の視点しかもてず、貴重な情報が共有されにくい状況となる。

1996年におきた事故はその象徴的な出来事だ。
ボブ・ホールをリーダーとするチームも同様に顧客を安全に登頂させるために、入念な準備と計画のもとにエベレスト登頂に挑んだが、多くの犠牲者をだした。
顧客といっても経験豊富な登山家ばかりだ。
中には航空機パイロットもいた。彼は雲の専門家でもある。まだリーダーも隊の誰も気付いていない積乱雲の存在にいち早く気付き、登頂前には嵐になることを予感していた。

しかし、そのような貴重な情報は共有されることはなかった。
リーダーの意思決定に全てを託していたからだ。
支配的な権力を持つリーダーの存在によって、これらの有益な情報は共有されず、リーダーであるボブ・ホール自身も犠牲となった。

なぜ悲惨な事故がおこったのか?

人間を含む多くの動物の頭や心は序列が定められた集団の中で生きるように設計されている。
集団や群れとなって生活していく以上、強いリーダーやボスの存在が不可欠でそのリーダーが決めたことに従うことで、集団は一致団結して、生き延びることができるからだ。

単純な問題であれば、リーダー一人に任せた方が良い場合もあるが、複雑な視点や知識を要する問題においては、多様な意見が不可欠である。
威圧的、支配的なリーダーの存在は、その際に大きな障壁となる。

1978年のユナイテッド航空173便の事故の例では、機長の判断ミスで10名の死者がでた。
これは、序列の低い機関士などが機長に意見しにくい状況下で、機長に正しい情報が共有されずに起こった悲劇だった。(機長は着陸時に車輪の固定ランプが点灯しなかったことで旋回を続けて、燃料不足という重要情報を機関士が機長に伝えられなかったことで航空機が墜落した)

同様に医療現場でも伝達ミスにより多くの事故が起こっている。
これは業界が違っても同様の問題をかかえている。
この背景にあるのは、リーダーはその分野に一番精通して知識も経験も豊富だというチームメンバーの思い込みがある。
わざわざ自分が言わなくてもリーダーなら知っているだろうと思えば、多様な意見は出なくなる。
すると、チーム自体は多様性があったとしても、リーダー一人の認知力の中でしかチームは機能しなくなる。

ロッテルダム大学が行った300件におよぶビジネスプロジェクトの成功率に関する研究では、地位の高いリーダーが存在するプロジェクトの方が失敗率が高いというデータもある。
メンバーはリーダーが聞きたいと思うであろう情報だけをオウム返しのように伝えると多様性は著しく毀損する。

壊滅的な会議

集団における意思決定を研究する米ケロッグ経営大学のトンプソン教授の研究では、会議の参加者の人数が増えれば増えるほど、反逆者的なアイディアが提案される機会が減少する。
4人の会議では2名だけが全体の60%発言をし、6名の会議では3名だけで全体の70%発言する。

また行動経済学の一つバンドワゴン効果(同調行動)により、情報カスケード(参加者全員が同じ判断をして一方向になだれ込む現象)が頻繁に起こる。
この背景にあるのは、全員が賛成している判断に「NO」を突きつけ、集団の和を乱す人間だと思われたくない心理があるから。

このように、集団で会議を開き、全員の意思決定でくだされた判断においても、実は誰か一人のアイディアや判断指標によって、他の参加者も一方向になだれ込む意思決定をする。
また最初は違和感を感じていても、集団の意思決定が一方向になだれ込むことで、「そうなのかもしれない」と自分自身の考えに蓋をしてしまい、多様な視点とアイディアが生まれない壊滅的な会議となる。

Googleの失敗

Googleは以前、完全なフラットな組織にするべく管理職を撤廃したが大失敗をした。
Googleでさえ、社長、専務、常務、部長、課長、係長、主任、一般社員のようなヒエラルキー(ピラミッド側の階級組織構造)が必要だった。

支配型ヒエラルキーと尊敬型ヒエラルキー

ヒエラルキーには2種類ある。

  • 支配型ヒエラルキー:強制、威圧、操作、懲罰と褒美で人々に影響力を行使し従わせる。
    それ故、反逆的な意見や多様性は殺され、組織全体は萎縮する。
  • 尊敬型ヒエラルキー:特定の優れた資質(狩猟の腕が良い、寛容で利他的な性格など)をもつ人物が自然と周囲から尊敬を集めてリーダーとなるもの。
    そのリーダーの元では心理的安全性が構築され多様な集合知が共有され組織全体が活性化する。

成功するチームの特徴

Googleが特定のチームがほかチームより優れた結果を出すことに着目し、社員調査を行ったところ、チームに成功をもたらすもっとも重要な要因は「心理的安全性」だった。

心理的安全性は多様なアイディアが集まるだけでなく、メンバーの行動力にも寄与する。
さらに心理的安全性の高いチームはより高い収益を出し、マネージャーからのメンバーへの評価も2倍高かった。

尊敬型ヒエラルキーによて構成されているチームでは、心理的安全性も高く、地位やポジションによって意見が言いにくかったり、提案が採用、却下されたりすることはない。
自由に発言でき、それらを主体的に形にできる。

Amazonの会議前の「黄金の沈黙」

Amazonは会議の前にその日の議題が文章化(箇条書きのものではなくナレーションのようなもの)されたものを参加者全員がまず読むことから始まる。
発言の前に議題に対して参加者が考えることで、多様な視点で意見が集まりやすくなる。

4.イノベーション

漸進イノベーションと融合イノベーション

イノベーションには2種類ある。
漸進イノベーションと融合イノベーション。

漸進イノベーションは既存のアイディアに対して改良を重ねて徐々に改良されイノベーション的なものになるもの。
例:ダイソンのサイクロン掃除機など(何度も円筒部の直径など改良を重ねて革新的なものになった)

融合イノベーションとは、これまで関連のなかった異分野のアイディアを融合させて全く新しいものを作り出すもの。
例:スーツケース(バッグ+車輪)、iPhone(携帯電話+音楽プレイヤー+カメラ)、Instagram(Facebook+写真加工機能)

2つのイノベーションは生物の進化の過程にも似ている。
生物の進化とは生殖によって累積的に進む。
漸進イノベーションは世代ごとに起こる小さな変化で自然淘汰に近い。

一方、融合イノベーションとは、異なる個体の遺伝子を融合させることで起こる突然変異に近い。
両者の違いは進化のスピード。
何十億年前に複数の異なる微生物同士が遺伝子のやりとりをしていなければ人類の進化もなかった。
生物に限らずアイディアもプロダクトもサービスも文化も交配によって新しいものが生まれる。
分子生物学者のフランソワ・ジャコブも「創造(クリエイティブ)とは融合である」という言葉を残している

なぜ世界的な起業家は移民が多いのか?

世界的な起業家にはウォルト・ディズニー、イーロン・マスク、孫正義など、移民もしくは移民の子孫であるケースが多く、全米上位500社の43%が移民や移民の子孫によって創業されいる。
またノーベル賞の65%はアメリカに拠点を置く研究者が授与されているが、その半数以上がアメリカ国外で生まれている。

移民もまた融合イノベーションの強みが発揮できる人たちである。
自国から他国に移り住む過程で、特定の思考の枠組みから抜け出し、別の新たな角度から物事を捉える力があるからだ。

移民でなくとも、多様な経験は新たな融合のアイディアをもたらす一助になる。
また経験ができなくとても、思考のフレームを変えることで、新たなアイディアは生まれる。

前提逆転発想法

移民がイノベーションを起こす要因の一つに移民には「第三者のマインドセット」があるからだ。
「第三者のマインドセット」とは、当たり前となっている既存の枠組みに囚われないマインドのこと。
見慣れた物事を新たな視点から見て、新たな発想を得られる方法はいくつかある。
その一つが「前提逆転発想法」だ。

これは問題の核となる「前提条件」を逆転させてアイディアを生み出す方法。

レストランを始める場合、メニューがあることが前提になるが「レストランにはメニューがない」と考えてみる。
すると当日、市場で仕入れた旬で新鮮な安価な食材を提供できる。
顧客はその食材を指定して好きな料理をシェフに作ってもらうような新しいレストランが生まれる。
タクシー会社の大前提は「タクシーがある」があるだが、これも「タクシーがない」で考えてみる。
そうして生まれたのは「Uber」だ。

ルート128とシリコンバレーの明暗を分けたもの

1975年当時、ボストン郊外のルート128は世界の巨大テック企業6社と関連企業が複数集積する拠点だった。

しかし製品アイディアが他者に流れないように、秘密主義を貫く起業が多くなり、自社のエンジニアを幅広いネットワークから隔離し、多様な視点での交流や融合、それがもたらすアイディアの飛躍などイノベーションを引き起こず土壌を図らずとも塞いでしまった。
企業は孤立化を深め、2000年にはルート128は完全に沈んでしまった。

一方、シリコンバレーにはエンジニア同士が交流できるバーなどで日夜、活発な交流がなされていた。
組織が異なる多様な視点をもつもの同士が情報やアイディアを活発にぶつけて、新たなアイディアが生まれる土壌となっていた。
そんな環境で世界初のパーソナルコンピュータ「Altair 8800」のマイクロチップの仕様書を見せてもらったスティーブ・ウォズニアックは、すぐに「Apple I」の全体像が浮かんだとされている。

両者の違いは情報の垂直伝播と水平伝播である。
ルート128は組織で情報が引き継がれる垂直移動するだけに対して、シリコンバレーは異なる組織に情報が水平に波及する。すると集合知が働き、エンジニア、企業単位ではなく地域全体の競争力が高まり、世界有数の産業地域となった。

日本も明治維新によって、鎖国体制から諸外国との交流を始めた結果、アメリカやヨーロッパから当時の最先端技術や西洋文化、人の交流が活発となり、国を強くし、日本人の生活を豊かにしてくれた。
現代ですら、文明社会と接点を持たない「未接触部族」は存在し、彼らはイノベーションとは対局に位置するところにある。

このことから、孤独や孤立、狭い世界に生きる人間は多様な視点や可能性、変化や進化といった”ギフト”を受け取ることができない。
自ら多様性を育む環境に身を置くことが重要だ。

エコーチェンバー現象

コロンビア・ビジネス・スクールの実験で、ある100人の異なる業界のビジネスマンを招待して交流会を実施した。
参加者にはタグをつけてもらい、交流会でどのようにネットワークが広がったか可視化できるようにした。

参加者もネットワークを広げることを期待して参加したが、結果は真逆のものだった。
ほとんどの参加者が顔見知りと会話する傾向が多く見られた。

これは人類の創世記から続くもので、集団間には物理的、心理的な壁が存在するからだ。
自分と同じ趣味、似た考え、価値観を持つ人同士との会話のほうが共感の和が広がりコミュニケーションにもストレスがない。
しかしこれは現代社会の特徴の一つである「エコーチェンバー現象」につながる。
(エコー=反響、チェンバー=小さな部屋/空間)

SNSなど自分の友人や似た趣味思考の人をフォローすると、自分の考えや信念が増長され、視野が狭まる。
Googleなど検索結果のアルゴリズムもフィルターバブル(特定のフィルター)によってふるいにかけられ、ユーザー好みの結果を返す。
サービスを使ってもらうという意味で、利用者が好む情報を提供するのは理にかなっている。
しかし利用者はまるで泡に閉じ込められたような状態となり、真逆の集団の意見や多様な視点からは遠ざけられてしまう。

標準化を疑う

1940年末〜50年にかけて航空機の事故が多発していた。
米空軍ではそれが顕著で、1日に何件もの事故が発生していた。
原因は航空機の機体や整備不良でもパイロットのスキルや熟練度でもなかった。
それはコックピットのサイズがパイロットの体格に合わせて標準化されたサイズでデザインされていたからだ。
1920年代にデザインされたもので、パイロットの体格に合わないのは当然だった。

しかし問題はそこではない。パイロットの平均値に合わせてデザインされている点がそもそも問題だった。
人間の体格は平均などというもので一概に測れない。
身長はもとより、胴体、腕の長さ、股下の長さ、指など、多岐にわたる。
それらを計測して平均をだしてデザインしても、そのデザインされたサイズにピタリと当てはまる人間など一人もいない。

そこで更新されたコックピットには座椅子の高さを調整できたり、ジョイスティックの位置を変えられたりとパイロットがコックピットに合わせるのではなく、コックピットがパイロットに合わせられるようにデザインされなおした。
その結果、航空機の事故が減少していった。

標準化は多様性とは対局に位置している。
仕事のやり方ひとつとっても標準化されたやり方で効率を発揮する場合もあるが、各人がもつ独創性を損なうリスクもはらむ。

実際にGoogleの販売管理部門の社員は、それまでスケジュールや利用ツール、タスクなど画一化されたもので、個人でカスタマイズされたものではなかった。
そこで自分の仕事を彫刻家になったつもりで設計してもらうようなワークショップを開いた。
会社やチームの目標などはそのままに、タスクや人間関係を個人の興味やスキルなど価値観に応じてカスタマイズできるような事例を紹介して、自身のビジョンや役割に沿うように仕事を再設計した。

結果は、実施前に比べて周囲からの評価も、生産性も、また自身が仕事をする上での幸福感も高まった。

標準化にもいい面はある。
例えば服などは平均的な体格に合わせて生産することでカスタムメイド品に比べればコストは抑えられる。
(しかし、自分にそれがピタリと合うことはない。全ては表裏一体だ)

ダイエット方法についても、ある方法が合っている人もいれば真逆の結果がでることもある。
人間の腸には40兆個の細菌が生息する「宇宙」である。
さらに、その”宇宙”に存在する細菌の遺伝子数は、人間の遺伝子数の200倍も存在する。
一人の人間自体は多様性そのもので、画一化されたダイエット方法など全ての人に画一的に当てはまることはない。

自分自身で血糖値を計測して、どういう食品を接種することで血糖値が乱高下するかを分析して、自分自身で自分のことを理解するのが一番のダイエット方法だ。

5.大局を見る

ホモ・サピエンスとネアンデルタール人の明暗を分けたもの

人類の祖先とされるホモ・サピエンスの脳の大きさはネアンデルタール人の脳の大きさと同じか少し小さいくらいだった。
個人レベルの頭脳では劣っていたホモ・サピエンスだったが、一方で社交性が高く、社会的コミュニティーの中で道具の使用、言語の発展、社会構造の形成など、多くの面で優れた能力や知識の情報共有が何世代にも渡り繰り返され、蓄積され集合知を獲得していった。

その結果、他の霊長類を圧倒する存在となった。
つまり個人の力より、社会的な組織力の方が遥かに強大ということだ。

日常生活に多様性を取り入れるための3つのこと

無意識のバイアスを取り除く

人は無意識でバイアス形成する。
人種、性別、年齢、出身地、学歴など。
あらゆる対象に対してバイアスに引っ張られると多様性は失われる。
こうした背景から、オーケストラの審査ではカーテン越しに演奏させるなど、バイアスを排除するためのアイディアや取り組みが行わている。

陰の理事会

ファッションブランドのグッチは「若者とベテランのコミュニケーションを定期的に行う」ことで、凝り固まった考えにテコ入れし、新しい文化やデジタルテクノロジーをいち早く取り込むことに成功した。一方、ブラダはそのような機会が作れずに遅れを取った。

与える姿勢

情報は共有されなければ、蓄積されず集合知にはならない。
他者に自身のアイディや知識、情報を与えるという姿勢が重要だ。
いわゆるGIVE & TAKEの精神でいうギバー(与える人)になるということ。
ある研究ではギバーの方がテイカー(受け取ることを優先する人)よりも学業成績におて優秀になったり、成功をおさめる確率が高い。
その背景にはギバーは多様性豊かなネットワークの構築、広い視野と反逆者のアイディが得られる機会が増えるからだ。

【本要約】GIVE & TAKE/成功するギバーは自己犠牲ではなく他者志向

まとめ

本書では多様性の欠如による失敗事例が多く紹介されていましたが、逆に多様性の力をどう使うか?の方こそ重要です。
そこで僕なりに考えた仕事にも人生にも使えそうな多様性の活用ポイントをいくつか挙げてみます。

仕事で活用するポイント

  • 自分と考え方の違う人や反対意見に耳を傾ける。(集合知の最大化)
  • アイディアが活発に飛び交うようにチームの心理的安全性に配慮したコミュニケーションをする。(否定しない)
  • 周囲から定期的にフィードバックを求める(自分だけの視点にならないよう)
  • 情報やアイディアは自分だけのものにせず積極的に外に向けてアウトプットする。
  • 常時、今よりももっといいやり方を模索する。

私生活で活用するポイント

  • 普段合わない人とコミュニケーションの機会があれば積極的に楽しむ。(異種交配によるイノベーション的発想の機会)
  • 新しい場所、新しい価値観に触れる(旅に出たり引っ越したりできれば最高だが、普段いかない店に行くなどもいい)
  • SNSやニュースを断つ(エコーチェンバー現象やフィルターバブルの影響を最小限化)
  • 逆転発想法をゲームとして日常に取り入れる(常に第三者のマインドで世界を見る=新しい気付きが得られる)

あとがき

この書籍を読み終わり、普段通勤している東京の街で行き交う人々を眺めた時、都市も人間にとっての”アリの巣”であり、国家も地球全体もそして宇宙全体も多様性の集合体だと感じました。

それぞれ個の動きは全体でみたら全く関係していないように見えて、しかしその個の動きが複雑に相互作用して創発システムを構成している───。
こう考えると、個の存在がちっぽけにも感じるし、大きくも感じる不思議な感覚になりました。

僕たちは広大な宇宙にとっては花一輪の存在に過ぎないのかもしれません。

しかし、せっかくいただいた命、自分の存在が世界にとって善い作用となるよう、できる範囲で善い行いをしたいです。
その小さな積み重ねが個人の成功ではなく、チームや地域、社会といった大きな枠組みに0.00000001%でも影響して大きな作用をもたらすと信じて。


多様性の科学

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