【本要約】サイコロジー・オブ・マネー/富がもたらす最大の恩恵とは?
今回ご紹介するのは「サイコロジー・オブ・マネー/一生お金に困らない「富」のマインドセット」(著者:モーガン・ハウセル/翻訳:児島 修)です。
筆者が目指してるのは「経済的自立」と「夜を安心して眠れること」です。
そして筆者の資産を作る上でのアプローチは特に目新しいものはなく実にシンプルです。
- 質素倹約(収入があがっても生活レベルをあげない)
- インデックスファンドへのドルコスト平均法での投資
- 時間>お金
この考え方に共感し、すでに実践している人は安心してください。
本書では「ラットレースから抜け出し、心の平穏のために生きる」ことを目指している人たちにとって、お金や成功にまつわる具体的なエピソードが散りばめられています。
その中から特に気になった部分を短く要約してみました。
サイコロジー・オブ・マネー――一生お金に困らない「富」のマインドセット
この記事の目次
見かけより「良い」も「悪い」もない
フェイスブックはマイクロソフトから10億ドルで買収と提案されたが、それを拒否しさらなる成長を遂げた。一方でyahooも同様に買収の話があったが、売れるときに売っておかなかったために落ちぶれた。マイクロソフトのビル・ゲイツは母校にコンピューターが導入されたという運があり、マイクロソフトを創業した。一方、当時一緒に志を共にしていた友人は山岳事故でなくしている。どちらも100万分の1の確率でプラスとマイナスに運とリスクが働いた。リスクと運はドッペルゲンガー(瓜二つ)である。何事も見かけほど良いものでも悪いものでもない。
成功者を見るときはその人自身の能力だけで成功した訳ではないことを理解しておくことが大切です。
裏を返せば、その人と同じことをやっても同じくらい成功できる訳ではないということです。
たまたま運が良かっただけ、たまたま運が悪かっただけということは十二分にありえる話です。
私達は、運良く、そして忍耐強く10代から投資をしているウォーレン・バフェットを目指してはいけないのです。
テールイベントが成功をもたらす
ディズニーはずっと赤字続きだった。成功に導いたのは白雪姫だった。実に400本以上の作品を作ってきた。
実に1/400という確率で、七転び八起きどころではありません。
ディズニーの成功は、このテールイベント(数千から数百分の一の確率で起こる例外的な出来事)の結果だと言えます。
私達が普段注目しているのは、テールイベントの結果なのです。
ポートフォリオにおいても、全ての投資銘柄が素晴らしいリターンを生み出す必要はないし、それを期待してはいけません。
投資において最も重要なことは市場から退場せず、忍耐強く投資を続け、時間軸を味方につけることであると、本書では繰り返し書かれています。
柔軟性の大切さ
テクノロジーによってあらゆるものが結びつくハイパーコネクテッドワールドでは、世界中の優秀な人たちを相手にし、競争を勝ち取る必要があり、現代では知性は確実な強みにはならない。だが、柔軟性は確実な強みになる。知性の競争が激化し、テクノロジーに取って代わられた世界で競争に優位に立てるのはコミュニティケーション力や共感力など数値では表しにくいソフトスキルを持つ人材だ。なかでも柔軟性を持つことだ。そして貯蓄がもたらす柔軟性があればキャリアも投資機会も掴むことができる。
ダーウィンの進化論で、「強いものが生き残る訳ではなく、変化に対応できるものが生き残る」というのは有名な一節ですよね。
まさに変化に対応するための柔軟性がテクノロジーの及ばないソフトスキルの一つかもしれません。
この世界では前例のない出来事が常に起きている
スタンフォード大学のスコット・セーガン教授は「この世界では前例のない出来事が常に起きている」と警笛を鳴らしている。歴史とは主に過去の出来事の研究で成り立っている。にもかかわらず、投資家や経済学者はそれを未来への揺るがない指針として用いている。しかし、革新と変化が進歩の源になっている分野で、過去のデータを未来への手がかりとして過度に過信するのは危険であり、ファイナンスの答えは過去にはないということを理解しておこう。
過去の最悪な出来事が、未来の最悪な出来事の上限値ではないことを理解しておく必要があります。
その上で必要になってくるのが「誤りの余地」です。
”誤りの余地”を常に残しておく
投資のプロでも株式市場で勝つことは難しい。低い可能性で最大の利益を得るために必要なのは時間を味方につけること。そして誤りの余地を残しておくほど、どんなことにも耐えやすくなる。耐久力があるからこそ、長期間にわたって株式会社市場から退場せずに勝負を続けることができる。
保有株式が仮に30%下落した場合、メンタルに及ぼす影響は想像以上に大きいです。
現金を十分に保有するという”誤りの余地”を残しておくことで、途中で投げ出すことなく、長く投資を継続することができます。
誤りの余地を残していない人は、株で失敗するとそれに耐えられずゲームオーバーを自ら選んでしまう可能性が高まります。
リターンを得るため入場料は必要
ディズニーランドのチケットは1,000ドルする。これはディズニーランドを利用する上での罰金ではなく入場料だ。そしてもちろん、この1,000ドルという入場料は支払う価値がある。子どもたちは一生忘れることができない思い出を作ることができるし、親も子どもたちの喜ぶ笑顔をみることができる。
市場にも入場料を支払うだけの価値はあります。
ボラリティや不確実性の高い株式投資への入場料(下落による損失、メンタルに及ぼすマイナス面)は現金保有や債券のような低額で遊べる遊園地より高いです。
これらは元本保証されているような銀行預金では得られない大きなリターンを得るための入場料であると認識すれば、損失が出たとしてもメンタルへのダメージを減らすことができます。
貯金をする。ただ貯金をする。貯めるのに特別な理由はない。
日本人は世界屈指の貯金好き国民なので、「未来に備えて貯金しよう!」と言われても「そんなの当たり前だろう」と思うところですが、アメリカ人を含む海外の人にとては現金預金というのはあまり賢い選択肢にはならない故に刺さるメッセージなのかもしれません。
ここで面白いのは「貯金をする特別な理由はいらない」と書かれている点です。
家の購入資金のために、車を買うために、子供の教育費のために、老後の資金のために…貯金の理由は様々ありますが、貯金をする理由はたしかにいらないのかもしれません。
富がもたらす最大の恩恵とは?
筆者の両親は、あるタイミングで仕事をスパッとリタイアして家族との時間を優先させる生活に切り替えたそうです。
貯金があれば、自分の好きなときに、好きな場所で、好きな人と、好きなことができるという経済的自立が可能です。
お金がもたらす最大の恩恵はここにあります。
これを手に入れるために貯金すること自体に特別な理由はいらないのです。
また、過去に起きた最悪のことが未来に起こる最悪の基準ではない以上、誤りの余地として貯金は十分に見積もっておく必要があります。
大切なのは市場が暴落しているような最悪のタイミングで株を売らないことです。
想定外の出費に十分対応できるだけの現金は手元に残しておくことで、投資機会をいかし、安心してリスクのある資産運用ができます。(※参考:筆者のポートフォリオ全体に占める現金比率は20%)
まとめ───ウクライナ侵攻に見る”誤りの余地”の備え
サイコロジー・オブ・マネーを読んで感じたのは歴史を未来の指針にしてはいけないということです。
僕がそう感じたのはロシアによるウクライナ侵攻です。
まさか現代のヨーロッパにおいて侵略戦争が勃発して罪のない一般市民に被害が及ぶとは思いませんでした。
一般のロシア人にとっても、まさかこんな短期間でクレジットカードが使えなくなったり、自国通貨が大暴落するなど想定できなかったのではないでしょうか。
”過去最悪の出来事”というのは、塗り替えられるものであり、想定外の出来事に対して十分対処できるだけの”誤りの余地”を見積もっておいた人だけが、実際にそれが起こった時に対処できます。
仮に起こらなかった場合はラッキーだと思えば良いだけです。
未来を悲観し過ぎるのはよくありませんが、”何が起こっても”致命傷にならない備えは必要だと思いました。
続きは本書をぜひ手におってお読みください。