【本要約】行動経済学が最強の学問である〜35個の理論一覧まとめ

【本要約】行動経済学が最強の学問である|初心者でも分かる!35の理論一覧

今回ご紹介するのは「行動経済学が最強の学問である」(著者:相良 奈美香)です。

本書籍は行動経済学を始めて学ぶ初心者でも理解しやすいように、初めて体系的にまとめたものとなっています。

従来の経済学では人間は合理的に行動することを前提として考えられていました。
しかし、実際には人間は非合理的な意思決定と行動をとります。

現代社会では商品やサービスなどマーケティング理論が駆使され、人々の注意や関心を惹きつけ、消費行動へと掻き立てています。
行動経済学は、そんな人間の非合理的な意思決定プロセスを紐解いた学問です。

本書籍は企業のマーケティング担当者はもちろん、あらゆる仕事へ応用可能です。
なぜなら仕事、ビジネスの中心は”人”だからです。

自分、上司、部下、取引先(クライアント)、顧客(ユーザー)

行動経済学を理解することは人を理解するということです。

「彼を知り己を知れば百戦殆からず」───人を知ることで優位にビジネスを進めることが可能です。

行動経済学は学問としてメッチャ面白い!

この書籍の僕の率直な感想は「行動経済学ってメッチャ面白い!!」です。
自分自身の非合理的な意思決定や優柔不断な決断力、また行動する理由、行動できない理由などが理論として説明され理解できました。

「なんでいつもコレを選ぶんだろう?」
「なるほど、だから人や環境から影響受けるんだ…」
「自分の認知のクセはコレだ」

…などなど納得しまくりです。

もちろんマーケティング視点も養われるので、ビジネスや副業への応用も可能です。

書籍では大きく3つのカテゴリに分けて整理されています。

  1. 認知のクセ
  2. 状況
  3. 感情

本記事では、この3つのカテゴリに紐づく行動経済学の理論と具体的な事例をセットに一覧でまとめました。

では早速、行動経済学を学んでいきましょう!


行動経済学が最強の学問である

人間が非合理的な意思決定をする3つの要素

人間が非合理的な意思決定をする上で抑えておくべきポイントが3つあります。
まずはこの3つの要素を解説して、そこから各要素に紐づく理論を合計35個ご紹介します。

1.認知のクセ

「認知のクセ」とは脳にインプットされた情報をどう処理するかを決めるためのものです。
人間は情報を自分の過去の経験や知見などと勝手に照らし合わせて歪んで処理します。
自分にとって都合の良い情報ばかり探して自分の選択を正当化したりします。

2.状況

ちょっとした状況の変化も私達の意思決定に大きく影響を及ぼす。
例えば、嫌いな人が近くに来たら本当はその場にいたくても、自ら違う場所に移動するなどです。
無意識レベルでもこのような意思決定をしています。

3.感情

感情は人間が太古の昔から生きるために備わっていた機能です。
外敵と戦うために怒りの感情を力に変えたり、食べることができない不安感を保つことで備えて生きながらえてきました。

それでは実際にそれぞれの3つの要素から細かく各理論をみていきましょう。

1.認知のクセ

1-1.システム1とシステム2

  • システム1は直感的、反射的な意思決定(ファスト)
  • システム2は熟考、分析的な意思決定(スロー)

アメリカの行動経済学者・ダニエル・カーネマンが提唱したのが「ファスト&スロー」です。

簡単な計算をするときなど、パッと見て答えを出すのはシステム1。
本当にそれが正解か再度振り返るのはシステム2。

例えばスーパーに行って考えずに商品をカゴに入れるのはシステム1です。
それが本当に今必要か?節約しようか?栄養や添加物はどうだろうか?と熟考して購入を検討した段階でシステム2が働いています。

システム2はより精度の高い意思決定ができます。
このシステム1とシステム2は無意識下で連動して同時に動き、人間は1日のうちに35,000回も意思決定をしています。

マクドナルドのアンケートが失敗した理由

マクドナルドは新商品開発として顧客アンケートを実施しました。
その回答には「よりヘルシーな商品」を希望する回答が多く寄せられました。

そして誕生したのが「サラダマック」です。

顧客によって求められたはずの「サラダマック」でしたが、実は全く売れませんでした。
マーケティング系の教科書では失敗事例として紹介されるほどです。

なぜアンケートで求められたはずの商品だったのに売れなかったのか?
それは顧客はアンケートを回答している時と商品を実際に購入する時とでは状況が違います。
顧客がマクドナルドに行く理由は仕事で疲れたときやジャンキーなものが食べたいときです。
システム1が強く働く状況下と、アンケートに回答するというシステム2が強く働く状況下では意思決定とその行動に差が生まて当然です。

このことからもアンケート結果などをマーケティング施策に展開する場合、注意が必要です。
アンケート結果を鵜呑みにせず、マーケティング担当者は自身のシステム2で本当にそうなのか?としっかり考える必要があります。
顧客自身も状況により真逆とも取れる非合理的な意思決定をすると覚えておきましょう。

1-2.メンタル・アカウンティング(心の会計)

人は同じお金でもどのように入ってきてどのように使うかでその価値が違うと認知します。

例えば劇場の公演で10ドル払うつもりが、財布をみたら10ドル札を1枚、来る途中に落としてなかった。
この場合、9割の人は財布から別の10ドル札を出してチケット買います。
しかし、前日に買っておいた10ドルのチケットをなくしてしまった場合、買う人は半分になるという調査結果があります。

このことからも、人間は同じお金でも無意識に何のために使うお金なのか?を仕分けをしています。

また例えば、思いがけない臨時収入(政府からの補助金やキャッシュバックボーナス)があれば、普段とは違う贅沢な消費をする傾向が高まるなど、非合理的な意思決定をしてしまいます。

食費は3万、家賃は5万と無意識に自分が決めた範囲で収めようとするのも認知のクセである「メンタル・アカウンティング(心の会計)」によるものです。

1-3.自制バイアス

人は自分が思っている以上に自制できると過信しています。
(実際には人は誘惑に非常に弱く、自制できない)

例えば、健康のためにジャンクフードが悪いと思っていても、目の前にあればつい手が伸びて食べてしまいます。
睡眠の質が落ちると理解していても、寝る間のスマホはやめられません。

これを防ぐ簡単な方法としては、自制したい行動に一手間を加えることです。

例えば、アメリカではクレジットを冷凍庫で冷やしてすぐ使えないようにしたり、お酒も冷蔵庫には入れず常温保存にしてすぐ飲めなようにするなどの手法がSNSで話題になりました。
スマホも電源を毎回オフにしたり、キッチンのカゴに入れて寝室に入れてすぐに触れないようにするなど一手間を加えるだけで効果があります。

自分が思っている以上に自制できないということを覚えておきましょう。

1-4.埋没コスト(sunk cost)と機会損失コスト(opportunity cost )

埋没コストとは、これまで払ってきた時間、お金、労力を取り戻すために回収が難しいプロジェクトやサービスなどをさらに継続してしまうことです。

機会損失コストとは、埋没コストとセットで考えるとわかりやすいです。
継続することをやめて、浮いたお金や時間、労力で新たに得られるはずの機会やチャンスなどを失うことです。

埋没コストの具体例として、新規事業や株式への投資分を回収できるまで継続投資し、損切りがなかなかできないこと。
機会損失コストの具体例として、今の会社を転職せず続けることで逆に失うチャンスもあること(転職することで得られる将来の新しいキャリア、人脈、経験、収入増など)

1-5.ホットハンド効果

ホットハンド効果とは、もともとはバスケットボールの用語(ミドルやスリーポイントシュートを連続して決めている状態のこと)
シュートを決める確率は一流選手でも50%と言われています。
観客は3回連続でシュートを決めた選手は4回目も決めると勝手に思い込むのはホットハンド効果による認知のクセです。

シュート自体は単発の事象であり、3本たまたま100%の確率で達成できただけで、4回目も100%であるという保証はありません。

また例えば3作連続でヒット作を出す編集者Aさんと、1本もヒット作を出さない編集者Bさんがいた場合、上司はホットハンド効果により、Aさんの提案を優遇し、Bさんを冷遇することもあります。
一般的にヒット作を出す可能性が10本に1本と考えれば、Bさんを冷遇することで機会損失や成長の芽を上司が奪うことにもなります。
これを防ぐ方法として、システム2で考えることが重要です。

1-6.フット・イン・ザ・ドア

フット・イン・ザ・ドアとは、最初に相手に小さな要求を呑ませ、段々とその要求を大きくしていくことで目的となる要求を承諾させる人間心理をついた交渉術のことです。

一度、依頼されて受けた場合、他人から一貫性のある人間と見られていたい(ころころ意見が変わる人間とは見られたくない)という心理が働きます。
また承諾し継続することで埋没コストや現状維持バイアスが発生して、やめることが難しくなる面もあります。

1-7.確証バイアス

確証バイアスとは、特定の対象(例えば購入を検討している商品)に対してこれが良い!これが悪い!と感じると、さらに良い部分、悪い部分だけを探して確証を深めようとする認知するクセです。

例えば、あなたが企業の人事担当だとして、採用面接時にAさんのことが気に入り、採用したいと感じた場合、採用することを前提により採用しても問題がないか確証を得たいと考えます。

旅行の計画時においても、プランAで行くのがベストだと思えば、そのプランの良いところをだけに目がいき、悪いところは多少目をつぶります。

これを防ぐには、まず確証バイアスが存在していることを認知し、あえて人から反対意見を聞いてみましょう(会議でも「悪魔の意見」としてあえて反対意見役を設けても良い)
絶対に自身で間違いないと確証したものこそ、良い面と悪い面(メリット、デメリット)の両面で考えることが大切です。

1-8.概念メタファー

概念メタファーとは、ある概念領域を別の概念領域を用いて理解することです。
例えばこんな感じです。

  • ワインのボトル=スラッとして背が高い=ハイグレード
  • コカコーラの2リットルボトル=太い=大衆的
  • 火=怒り
  • 緑=リラックス
  • 丸=かわいい
  • 四角=スタイリッシュ
  • 荷物を抱える=不安を抱える
  • 出世と権威=上向き・大きい
  • 落ちぶれる=下向き

人が持っている認知のクセ(概念メタファー)を利用することで、概念領域を別の概念領域で横展開することで、デザインなどにも応用できます。
例えば商品ロゴの位置や大きさ、商品パッケージの形状やウェブサイトの背景色などあらゆる要素など。

1-9.身体的認知

脳と身体は密接に関わっており身体から受ける情報も脳に認知されます。
例えば興味のない話だったとしても意図的に前のめりに聞けば脳も興味を示し前のめりに聞くようになります。
本当は特段楽しくなくても、強制的に笑ったり笑顔を作れば楽しくなります。

訪問先で温かいお茶を出されて飲んだときは温かい気持ちにになるし、冷たいお茶を出されたときは冷たい気分になります。絶えず身体から受ける情報は脳にも作用しているのです。

1-10.双曲割引モデルと現在思考バイアス

人は脳、身体以外にも時間に対しても非合理的な認知をします。

双曲割引モデルとは例えば、ある実験のレポートでは、今日、100ドルがもらえるのと、1ヶ月後に120ドルがもらえる場合、多くの人は今日を選びます。
しかしこれが、1年後に100ドルもらえるのと、1年1ヶ月後に120ドルもらえる場合、ほぼ後者が選ばれます。
(100円と110円の差は大きく感じても、10,000円と10,010円と10円の差はあまり大きく感じないのも同様)
同じ1ヶ月という時間でもその捉え方や価値が違うわけです。

人は遠い将来よりも今により重点をおく「現在思考バイアス」という認知のクセがあります。

1-11.解釈レベル理論

人は出来事や対象に対する心理的距離が遠いときには、より抽象度の高い解釈レベルで考えようとし、逆に心理的距離が近いときには、より具体的なレベルで考えようとする傾向があります。

例えば、旅行代理店がハワイ旅行を企画するとき、半年後の旅行プランを案内する場合は抽象度の高い「南国や青い海、リゾートバカンス」など抽象度の高いイメージで訴求し、直近で行くハワイ旅行プランを案内する場合は、ホテルの特典、食事内容、空港までの送迎サービスなどより具体的なプランを案内した方が旅行者は意思決定と行動ができます。

人は今日のことは具体的にイメージできても、半年後のことはぼんやりとしかイメージできません。

1-12.計画の誤謬(ごりゅう)

人は計画を甘くみつもって失敗する傾向が高いです。
「きっとできるだろう」と思っても、できずに失敗をします。

毎年、年初にダイエットや英語、副業など計画目標を立てても思い通りにはいきません。
思い通りにいかないので途中で諦めて、やめてしまいます。
とても勿体ないことです。

計画は楽観的に見積もるのではなく、かなり厳し目に見積もり、更になお10%ほど余裕をもっておくくらいが丁度いいです。

1-13.快楽適応

人は快楽に対してすぐに慣れてしまい、新たな変化を求める生き物です。
新車を買っても、すぐにその車に慣れてしまい、最初に感じた幸せを感じなくなります。
昇給、昇進、結婚生活、マイホームなど全て当てはまります。

もっと言えば人間は状況に慣れることが得意ということでもあります。

これは快楽だけではなく、苦痛にも当てはまります。
辛い状況でも自然と適応できるのです。

これを逆手に取ると気の乗らない嫌な仕事や作業は細切れでやるのは非効率です。
嫌な仕事に対して、とりかかり適応しかけたところでやめることで、またその嫌な仕事に着手するときにパワーが必要になるからです。
嫌な仕事こそ、意識的に一気に片付けてしまうのが効率的です。

1-14.デュレーション・ヒューリスティック

デュレーション・ヒューリスティックとは例えばサービス内容よりも、かかった時間で評価してしまう認知のクセです。

家のドアの鍵を紛失した場合、鍵屋に1分でドアを開けてもらい2万請求されるよりも、1時間一生懸命、鍵を開けることに費やして2万円請求される方が、その価値があると非合理的に考えてしまいます。

本来なら「鍵を開ける」という価値、サービスは同一のものです。

これは資料作成や提案にも言えます。
しっかり時間と熟考を重ねた提案の方が価値が高いと評価されやすいです。
デュレーション・ヒューリスティックを理解すれば、必ずしも早く要求を満たすことが良いとは限らないということです。

2.状況

人は状況で意識決定をしている

人の意識決定や行動は、おかれた状況や環境によって影響を強く受けます。
天気、周囲の人間、順番、音、時間───あらゆる状況が意思決定に対して影響します。

2-1.系列位置効果

人は最初と最後に与えられた情報が記憶や印象に残りやすいとされています。
特に最初と最後のものを選ばれる可能性が高いことを初頭効果と親近効果といいます。

初対面の第一印象は強く印象に残ります。
またお別れの時も記憶に残りやすいです。
これを上手く活用すればビジネスシーンにも応用できます。

2-2.単純存在効果

単純存在効果とは、例えば他人がそこに存在しているだけで自分の意思決定と行動に影響してしまうものです。
他人からよく見られたいなど、無意識にそういう行動をとります。

カフェの方が勉強や作業が捗るという理由も、他人が存在しているので、家にいるようにゴロゴロだらける自分を晒すわけにはいきません。
単純存在効果が働いているおかげです。

2-3.過剰正当化効果

過剰正当効果とは、もともと内発的な動機づけでやっていた仕事などが、金銭や賞品などの外発的インセンティブが発生することで、人の内発的動機づけを低下させる現象のことです。
アンダーマイニング効果とも呼ばれます。

人の役立ちたい、喜んでもらいたいなどの内発的モチベーションでボランティア活動をしていたところ、それを仕事として引き受けてしまうと、途端にやる気がなくなります。
お礼に20ドルを渡されても、やはり自分のやっている仕事の価値は時給20ドルしかないと落胆してモチベーションを低下させます。

マネジメントにおいても、上司は部下に対し、その人がどういう内発的なモチベーションでやっているかを見極めて、それに報いることこそが大切です。

2-4.情報オーバーロードと選択オーバーロード

多すぎる情報は人の生産性を劇的に低下させます。

そもそも人間は大量の情報を正確に処理するのが苦手です。
情報が多ければ多いほどシステム1で直感的に選ぶ傾向があります。(脳が疲れるので考える事自体をやめる)

マイクロソフトの調査では、人はだいたい1日に平均50〜100回はメールチェックをしますが、その度に元やっていたこと(仕事など)に戻るまで30分近くの時間がかかります。

情報オーバーロードを防ぐには部下への指示やフィードバックは簡潔に要点だけを伝えたり、段階的に伝えるなどの工夫が必要です。

また情報が多いことは良いことだと経済学での定説とは裏腹に人間は多すぎる選択肢もまた選ぶことができないという皮肉がある。
スーパーに行けば、飲料が100種類以上あるが、それらを一つ一つ吟味して選ぶことはできません。
沢山の品揃えがあることは良いことだと考えてても、いざ100種類を目の前に提示されても選べないというのが人間なのです。

選択オーバーロードから抜け出すために「テキトーに選択」する

日々、選択に迫られる現代社会において、選択事項の全てが重要ではありません。
時間をかけて比較検討したところで、どっちを選んでも大きく変わらないものが多いのです。

スーパーで並んでいる野菜の吟味、ウェブアンケートの設問、ほとんど滞在しないであろう出張時のホテル選び、業務上重要ではないタスクなどなど。

であるなら、「テキトーに選択する」を普段からデフォルトにしておくと良いです。

例えばAppleの創業者の一人スティーブ・ジョブズは毎日着る服を決めていました。
これも選択オーバーロードを減らす工夫です。

あなたも重要ではない対象をリストアップし、それらを「テキトーに選択」することをデフォルトにしてみてはいかがでしょうか?
例えば昼のランチはGoogleマップなどのレビューを入念に見て探さず、会社に近いお店からテキトーに入ってみるなど。

2-5.選択アーキテクチャーとナッジ理論

選択アーキテクチャーとは、多すぎる選択肢を選択しやすくするために設計(アーキテクチャー)のことです。
AmazonやYouTubeなどは、ユーザーのサイト内行動(閲覧履歴やウォッチリスト登録など)をもとに、おすすめ商品や動画を表示したり、人気順や新着順などフィルター機能で探しやすく(選択しやすく)設計しています。

回転寿司スシローのメニュー画面を開くと大きく「必食」というメニューがあり、今日食べるべきネタを提案してくれます。
これらの軽くつつく、行動をそっと後押しすことを英語で「ナッジ」といい、ナッジ理論として行動経済学で応用されています。

選択アーキテクチャーを考える上で、例えばワインやコーヒーなど一定の教養がないと選べないもの関しては、ユーザーが選ぶ上で参考になる基準を提示するといいです。

例えばコーヒーであれば産地、苦味、酸味、キレ、など。
別軸の選択アーキテクチャーで考えると、起床後、食後、夕方など時間軸、コーヒーと一緒に食べると合う食品などです。

また品質情報(どれだけ高品質なのか?ストーリーも含めて)についても伝えることで、選択時にユーザーは良いワイン・コーヒーだと十分に理解して購入するので、購入後も良いワイン・コーヒーを買ったと記憶に残りやすく、リピート購入してもらえる可能性が高いという調査もあります。

2-6.ディシジョンツリー(決断ツリー)

デシジョンツリーとは、保険商品など複雑かつ、選択肢が無数にあるようなものを選ぶ時はいくつかの質問に対してYES、NOを選ぶだけで自分にピッタリの商品がどれかが分かるように選びやすくするためのものです。

その他にも起こり得るシナリオなど複雑に分岐する事業計画や投資における期待値などあらゆるシーンでディシジョンツリーは使えます。

2-7.プライミング効果

プライミング効果とはあらかじめ与えられた刺激(プライマー)、色、音楽、匂い、位置などの情報によって無意識で意思決定に影響を及ぼすものです。

例えば、カレーの匂いを感じたら、カレーが食べたくなった、お菓子のCMをみたらお菓子が食べたくなった、ECサイトの背景を赤色にすると、事故・爆発=赤という連想が無意識になされて、自然と安全性重視のモデルを選ぶなどです。

また他の例ではワインショップでフランスを連想させるBGMをかけるとフランス製のワインが、ドイツを連想させるBGMをかけるとドイツ製のワインが売れるという調査もあります。
(しかも購入後にアンケートをとると店内BGMは全く意識していなかったという)

2-8.フレーミング効果

フレーミング効果とは、本質が同じでも、違う表現方法になることで、受ける印象が変わるという心理作用のことです。

同じ情報であっても、対象のどんな側面を見るかはフレーム(枠組み)によって見え方が変わってきます。

反対に、伝えたい情報を強調する見せ方をすることで、相手の受け止め方が変わり、意思決定に影響が生じます。
「100人のうち20人が生き残る」というのと、「100人のうち80人が死ぬ」は本質的には同じことですが、受け取る印象とその心理作用はかなり異なります。

5,000万円のマンションが今なら20%OFF!と提示されのと、5,000万円のマンションが今なら1,000万円OFFと提示されるでは本質は同じでも受け取る印象は大きく違います。

2-9.単独評価と並列評価

単体で存在しているものを評価するよりも比較対象があることで、より合理的で適正な評価ができます。
逆を言えば単独で存在しているものは合理的な評価ができません。

例えば

  • A:コンディション良好でカバーありの1万語収録の辞書
  • B:カバーがないけど2万語収録の辞書

単独評価ではAが高値がつくが、2つ並べて評価された場合、Bの方が40%も高くついたそうです。
1万語というのが多いのか少ないのか判断基準がもてないが、それを並列評価することで基準値がわかります。

2-10.おとり効果

あるベーカリーメーカーの事例です。
2万円のホームベーカリーを出したが売れませんでした。
そこで4万ドルの上位モデルを出したら2万円のモデルが売れるようになりました。
これも単純評価では2万円のベーカリーが高いのか安いのか分からないからです。
でも上位機種を4万円で出して、似たような機能のベーカリーが2万円で購入できれば、オトク(コスパ)が良いと人は感じるのです。

あえて誰も買わないような選択肢をおとりとして組み込むのは効果的なセールス手法です。

iPhoneも125G、256G、512Gと複数のストレージを用意して、並列評価がしやすい商品構成になっています

2-11.アンカリング効果

Apple Vision Pro(VRデバイス)は発表当時、50万円という破格の価格設定が話題になりました。
これもマーケティング的な戦略と考えます。
50万円という価格のインパクト、話題性が生まれただけでも戦略的な価値はあります。

おそらく、Apple Vision Pro発売後に、Apple Vision SEなどと銘打った普及版を20万円前後で発売すれば売れるはずです。

理由は最初の50万円という値付けがアンカーとなって比較されるからです。
最初から20万円の製品を出しても高くて買わない可能性があります。
(VRゴーグルの機能と値段の適正が一般消費者には分からない)

これは相場感が決まっている一般商材のようなものには適用しにくいですが、新しいシステムの導入、サービスの値付け、交渉などで色々と活用できる手法です。

転職時の給与交渉においても、最初にアンカーとなる高めの年収を提示すれば、ほぼ確実にその年収がアンカーとなり、アンカリング効果を活用しない場合と比べて高い年収条件で採用される可能性が高まります。

2-12.パワー・オブ・ビコーズ(※著者提唱)

人は何かお願いごとをされるとき、理由がないもより理由がある方のお願いを聞いてもらえやすいです。

これが面白いのは小さなお願いであれば、理由はテキトーでイイということ。
コピーを先にとりたい場合、「先にコピーをとらせてください」よりも「急いでいるので先にコピーをとらせてください」と理由ではないような理由を添えるだけでも、先にコピーを譲ってくれる可能性が格段に高まります。(あくまでも小さなお願いの場合に限る)

2-13.自律性バイアス(※著者提唱)

人は自分の意思で決めたい生き物です。
それを利用すると、交渉や依頼などがスムーズに通りやすくなります。
人に何かを相談・依頼をする時は「◯◯をやってください」ではなく、
「◯◯をお願いしたいと思っているのですが、AとBのどちらがより良いと思いますか?」など相手の意思で選ばせる余地を残した依頼の仕方をするのが効果的です。
(実際にはAでもBでもどちらの選択肢でも良いように交渉する)

”いつを変えるだけ”で意思決定がかわる

イスラエルの裁判所において囚人の仮釈放が認められやすい時間帯を調査した結果、朝一とランチ後、夕方の休憩直後が仮釈放が認められやすい時間帯だったそうです。

1日に3つの時間帯にピークがあるということは、これは人の決断疲れによるものでもあります。

人は意思決定を繰り返すほど、脳が疲れていき、その結果、リスクが少ない方(現状維持バイアス)の選択肢を選びがちになります。

この仕組みを活用して金融商品や住宅の購入、転職など重要な決断はシステム2がしっかり働く、朝一や休憩後、ネットショッピングなど小さく重要度の低い決断は夕方など脳の意思決定疲れをした後に分けて実施すると良いかもしれません。

2-14.感情移入ギャップ

感情移入ギャップとは、未来の自分を理想化してしまう状態のことです。

例えば朝は冷静でやる気に満ちているので、夜帰ったら健康的な野菜中心の食事をしてパッと寝よう!と思っていても、朝から帰宅後に仕事で疲れてジャンクフード食べながら夜ダラダラとスマホを見ている自分をイメージすることができないなどです。

未来の(状況としておかれている)自分はリアルに想像できません。
これを逆手にとれば状況によって自分を動かすのが良いです。
例えば、朝に夕食を作っておき、夜はそれを取り出して食べるなどです。
先に予定を入れたり、予約をとるのも先に状況を作り出す効果的なアプローチです。

3.感情

3-1.エモーションとアフェクト

人間には2つの感情があります。
1つ目はエモーション。
エモーションとは、はっきりとした感情(喜怒哀楽)のことです。

2つ目はアフェクト。
アフェクトとは淡い感情(なんか好き、嫌い)のことです。

人、はっきりとした喜怒哀楽よりも淡い感情の方を日常生活において多く感じるものです。
この淡い感情であるアフェクトが意思決定に強く影響していることを理解しましょう。

アフェクトはネット上でも伝染する

感情は人に伝染しますが、淡い感情のアフェクトですらネット上においても伝染します。
Metaが行った調査では、グループ1:他人のポジティブな投稿を減らした操作、グループ2:ネガティブな投稿を減らした操作で調査したところ、これらのグループから該当の投稿が徐々に減っていきました。

3-2.感情のマーカー

過去に経験したこと(犬に噛まれた、犬と遊んで楽しかったなど)や他人から聞いたことによって、瞬時にその対象に対して淡い感情をいだきます。
犬を見て微笑んだり、恐怖を感じるのは過去経験したこと、人からネガティブな噂を聞いたこと、ポジティブな噂を聞いたこと、全て感情のマーカーによって意思決定に影響します。
このことからも、何かをお願いするときは、相手の感情に訴えかけることが効果的です。
感情を理解している人同士のほうが、そうでない人同士よりも助け合うことが多いという調査もあります。

3-3.拡張-形成理論

ポジティブな感情は、視野や思考の幅を広げてより、意欲的に関わろうという思い活動の幅が広がる、幸せへの上昇スパイラルの引き金になります。
拡張-形成理論とはすなわち、ポジティブな経験や感情により、意欲的に関わろうと思い活動の幅が広がることで、身体的(健康)、創造的、知的(スキル)、心理的(思考の幅)、社会的(より良い関係性)が形成されるということです。

3-4.ポジティブ・アフェクトの活用

仕事などで成功して大きくエモーションを突き動かし、ポジティブな気持ちになるのは頻度の面でも難しいです。
そこで淡いポジティブな感情を意識して作り出します。

例えば好きなコーヒーを煎れて味わったり、部屋を片付けてスッキリした気分になったり、運動してリフレッシュしたり、自分がこれをするとポジティブな気持ちになれるという日常のことをすべてリストアップして生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

ネガティブ・アフェクトは抑圧せず向き合い再評価する

ネガティブ・アフェクトとは、脳の中の小さな不安や不満のことです。
まずそれらを感じたら脳の中に今、ネガティブ・アフェクトがあることに気が付き、認めることが大切です。

この時に口から不安だと声に出しても良いです。
脳のレセプターがそれをキャッチしてより認知できます。

今すごくピンチだ!と口に出してみる。
その上で、この機会をプラスに捉えるならどうするか?などピンチを抑圧せず解放し、再評価することで、漠然とした不安や不満も解消される可能性があります。
紙に文字で今のモヤモヤなどを書き出すのも同様の効果があります。

人は他者と比較することがデフォルトだから比較対象を変える

ネガティブ・アフェクトを感じる代表的なものが他者との比較です。
身近な成功している人、恵まれている人、優れてる人などと、他者と比較すると不安や不満の気持ち(ネガティブ・アフェクト)が大きくなります。
この場合、それをバネに努力をするか、比較対象を他者ではなく過去の自分(他人にはなれないし、上にも下にも大勢いる)など変えましょう。

大切なのは過去の自分からの成長実感です。
だから成長するために新しいワクワクした挑戦に取り組む=ポジティブな感情や視野や思考を広げる(拡張-形成理論)てみましょう。

緊張→ワクワクに変換することでパフォーマンスアップ

人前でスピーチをしたり、体験したことがない難しい挑戦をする時、緊張したり失敗したらどうしよう?などとネガティブ・アフェクトを感じるものです。
「冷静に落ち着こう」などとこれを抑え込もうとはせず、挑戦だから思いっきり楽しもう!今、ワクワクしている!とポジティブ・アフェクトに変換した方がパフォーマンスが発揮されます。

気乗りしないことに取り掛かるときは「すぐやめよう」でOK

仕事や運動、勉強など気分的が乗らないことをやらなけばいないときは、「一旦、5分だけやってすぐやめよう」と考えてみましょう。
5分やって本当に嫌ならやめればいいし、うまく現状維持バイアスが働き、続けられたらそれはラッキー。
10分できればそれ自体が達成感と自己肯定感につながります。
お金や評価ではなく、「今日はこれができた!自分はなんて偉いんだ!」と思うことで次のモチベーションにつながります。

お金の透明性によって使い方も変わる

現金とキャッシュレス(クレジットカードやスマホアプリ)では現金の方が使うことに心理的抵抗(所有物としてのお金が手元からなくなる)がありますが、クレジットカードやアプリは数字であり、お金の透明性が低く使ったという感覚も薄いです。
日々の買い物は現金で、逆に自己投資などお金を使った方が良いと思えるものはカードで簡単に支払うなどするといいです。

3-5.目標勾配効果

目標勾配効果とは、例えばお店のスタンプカードやSTARBUCKSのリワードプログラム(会員ランク制度)など、利用する度にハンコが押されたり、ポイントやランクがスマホの画面で確認でき、貯まったりアップしていくことで目標達成に向けて行動したくなる心理現象のことです。

1日のタスクリストを作り完了したらチェックマークをつけるのも同じです。
また資産構築もどんどん溜まっていき、グラフが積み重なっていると、さらに積み重ねて行きたくなります。
進捗が進んでいること、もうすぐゴール(目標に到達)することを視覚的に認識する仕組みをユーザーに提供することでサービスを継続利用してもらいやすくなります。

3-6.コントロール

人はコントロールしたい生き物で、反対にコントロールされるのを嫌がります。
自分で意思決定や行動を自分自身で決めてコントロールしたいのです。
よって、自分の意思とは別に状況など含めてコントロールできないものに対してはストレスを感じます。
コントロールできない状況の中でも、小さくてもコントロールできる選択肢をもつだけでも気持ちが紛れます。
例えば採血時に左右どちらの腕にしますか?と選べることなどの些細なものでも良いのです。

3-7.不確実性理論

人は不確実なもに対してネガティブな感情をいだき、非合理的な行動をとってしまいます。
いつ倒産してもおかしくない中小零細企業で働いていたり、クライアントからの契約終了であったり。

ある調査では、病院でがんの疑いがあると告げられた人のその後のストレス具合をはかった結果、その後の検査でがんではなかった人と実際にがんだった人とでは、「疑いがある」と言われた後、両者ともストレスは軽減されました。
実際にがんだったとしても、ストレスが軽減されたのは、治療方法など不確実な道筋に対してクリアになったからです。

一方で「宝くじ」などのポジティブな感情をいだきやすい不確実なものに対しても人間は非合理的な選択と行動をとります。
確率で考えれば、まず当選する可能性が極めて低いものにも関わらず買ってしまうのは、その数字よりも、当選後の生活にポジティブ・アフェクトを感じるからです。

  • 宝くじに当選する可能性は極めて低い
  • 宝くじに当選したら仕事を辞めて豪華な世界旅行に行く

具体的にイメージしやすく、ポジティブな感情になる方を選んでしまいます。
商品やサービスを売り込む時はその商品そのものではなく、ベネフィットを伝えることが有効だとマーケティングの教科書にはよく書かれてあります。
あくまでも売るのは商品そのものではなく、その商品を使った先にある理想の姿(モテるなど)をイメージさせることが大切です。

よりよい意思決定をするため

人間は非合理的な選択肢をとる生き物です。
本書籍で紹介された理論を理解することで、よりよい選択と行動ができるようになります。

人間の非合理な行動の積み重ねが「経済活動」というコトバが本質をついていてとても面白かったです。

ぜひ続きは本書を実際に手にとって理解をさらに深めてビジネスなどに活用してみてください。


行動経済学が最強の学問である

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