【本要約】自由になるための技術リベラルアーツ 「人・本・旅」から常識を疑う

【本要約】自由になるための技術リベラルアーツ 「人・本・旅」から常識を疑う

今回ご紹介するのは「自由になるための技術リベラルアーツ」(著者:山口周)です。

「すぐ役に立つことは、すぐ役に立たなくなる」

これは、かつて慶應義塾大学の塾長であった小泉信三の言葉です。
常に新しいテクノロジーや手法が生まれては消える現代において、真に重要になるのは、あたな自身の価値基準を持つことです。

多用な価値基準や視点をいかに身につけるか?
そのヒントが本書で述べられています。

全286ページの中から、僕が特に大切だと感じた部分を要約してみました。


自由になるための技術 リベラルアーツ

リベラルアーツとは?

一般的にリベラルアーツとは哲学、歴史、宗教、文学、美術、音楽などの「教養」のことです。
日本のビジネスの現場ではリベラルアーツは役に立たないと評価されることもありますが、世界では今、リベラルアーツが注目されています。

本書が示すリベラルアーツの「リベラル」とは「自由」という意味であり、「アーツ」とは「技術(手段)」のこと。
「リベラルアーツ」とは端的に言うと「自由になるための技術(手段)」となります。

「自由」という言葉の語源は新約聖書のイエスの言葉「真理はあなたを自由にする」から来ています。
「真理」とは時間や場所が変わっても変わらない普遍的で永続的な理(ことわり)です。

その時、その場所で支配されている常識や枠組みに対して一度引いた立場で相対化してみる───。
つまり「問う力」そのものが、リベラルアーツの真髄になります。

イノベーションとリベラルアーツ

イノベーションの歴史は過去の前提や当たり前を取り払われた上で成り立ってきました。
しかし、全ての常識を疑うことは、とてもつもなくコストがかかることです。
「見送って良い常識」と「疑うべき常識」を選ぶ力こそが大切になります。

その選ぶ力の手がかりになるのが、リベラルアーツであり、あなたの「モノサシ」です。

スティーブ・ジョブズはカリグラフィー(文字フォント)を学んでいたおかげで、「コンピューターの文字フォントが、なぜあんなにも酷いのか?」というこれまでの常識を疑い、機能、スペック、コストで比較されていたパソコンの世界で、デザインという新たなモノサシを武器にAppleを成功させました。

モノが溢れている現代において、ほしいモノがあまりないという人が多いです。
モノが未充足であれば、マーケティング調査会社によって顧客や市場のニーズを調査し、「正解」とされる商品を作り、宣伝をすることで商売が成り立ちます。
しかし、現代ではモノで解決できる未充足なニーズはほぼ開拓しつくされています。

Appleが革新的だったのは「機能」ではなく人の「感性」や「情緒」に焦点を当てたことです。

もしジョブズがマーケティングしか知らない人物であれば、イノベーションは起こらなかったかもしれません。
文字の造形美を学んでいたからこそ、「疑うべき常識」が存在していると認識でき、イノベーションが起こったのです。

自身のコナトゥスに従うことが武器になる

コナトゥスとは、日本語に訳すと「自ら高めようとする意志、傾向、努力」です。

自身のコナトゥスに従って自分の心が動く仕事がグローバルな競争力・武器となります。
前述のジョブズも自らのコナトゥスに従って、イノベーションを起こしました。

大切なのは、判断や行動する上で大切にする理想、倫理、美意識を持つことです。

広島にある「マルニ大工」は地方の家具屋でしたが、「日本発の世界で定番となる椅子を作りたい」という理想を掲げ、それを追い求めた結果、当時Appleのデザイナーだったジョナサン・アイブ氏の目に止まり、Apple本社に椅子を納品する家具屋となりました。

アウトドアメーカーのパタゴニアは「故郷である地球を救うためにビジネスを営む」という理念のもと、そこに共感するユーザーを獲得し、またパタゴニアで販売する商品もその理念のもと製造されています。
パタゴニアの創業者イボン・シュイナード氏は、2022年に自身と家族が保有する同社全株式を環境保護団体などに寄付しました。
寄付総額は30億ドルにもなり、気候変動対策にあてられます。

「儲かればいい」というコンプガチャや、「年収1億円営業術」のような”みっともない”ビジネスやコンテンツで人々から搾取していては、いつまで経っても真にグローバルで競争力のある企業やビジネスは生まれません。

「自らを高めようとする意志───コナトゥス」という武器を持つか持たないかは、あなたの生き方に大きく影響します。

人間を理解する手がかりとなるのがリベラルアーツ

世界は何かが過剰となり、何かが希少となるとバランスや均衡を保つようにできています。

例えば、行き過ぎた物質主義が強くなると、断捨離やモノを持たないミニマリスト的な人達が増え、行き過ぎた金融資本主義が強くなると、マインドフルネスや瞑想でストレスから逃れたい人が増えます。
テクノロジーやサイエンスが強くなると、不便さや芸術や文学などにスポットが当たる───。

最近、日本の山奥の旅館が外国人旅行客に人気だというニュースを読みました。
その旅館がなぜ外国人旅行客に人気であるかというと、電気もインターネットも通っていない不便さにあるということでした。
自分自身に向き合える環境に価値があるのです。

人間を理解するための知恵は単にマーケティング調査などで得られるような属性、年齢、年収、性別という一面では到底図り得ないものです。

人間を理解する上で参考となるのが、人類が長く、深く共鳴を受けてきた宗教、哲学、絵画、音楽、文学というコンテンツに残されています。

グローバルに活躍したければ宗教リテラシーは必須

私達、日本人は世界的にみても宗教に対して無関心であり、知識が乏しい側面があります。
しかし海外において、宗教と国民性は深く関わりがあり、その国でビジネスをするなら、国民性の理解(宗教の理解)は必須になります。

ここでは宗教についての詳細は割愛しますが、もし宗教について勉強したい場合、まずは新約聖書なら「共観福音書」を、仏教ならブッダの「真理の言葉」を読まれると良いと本書では紹介されていました。


ブッダの 真理のことば 感興のことば (岩波文庫)

歴史には嘘がない

書店に出回っている本を見ると「リーダーは鬼になれ」「リーダーは仏になれ」と相反する主張の本が山積みにされています。

どっちが正しいかは、それを主張する”人”によって左右されます。

しかし”歴史”は史実であり嘘偽りのない事実です。
歴史は「人々の本性や営みの結果そのもの」であり、人を理解する上でも役立ちます。
おおよそ今ある課題や問題は歴史の中でも繰り返されてきました。

例えば会社を創業家族にバトンタッチするときに、どのような体制やプロセスを踏めば良いか?など答えがあるようでない問題は歴史を調べてみると良いでしょう。
この場合、暴君や権力乱用によって短命に終わった王朝などを調べ、どういったパターンが存在するのか?その時、人間とはどのような振る舞いをする生き物なのか?など俯瞰視点で見てみると注意するべきポイントが見えてきます。

歴史が証明している持続可能な成長とは?

イギリスはナポレオン戦争後にナポレオンに支配されていた欧州各国を民族自決の大義の元、返還した歴史があります。
イギリスだけでは、すべてを統治することはできず、また諸葛孔明の「天下三分の計」と同様、パワーバランスが均衡した状態でこそ、自ら含めて持続可能な成長ができるという判断だったのです。

強い競合やライバルがいるからこそ、自ら慢心することなく、高められるということはビジネスやスポーツの世界においてもよく言われることです。

過去の成功パターンを捨てアップデートする

ライフ・シフトにおいて、職業人生、キャリアがかつてないほど長いものとなり、また環境やテクノロジーの発達も同時に予測不可能なレベルで進化と変化をしている現代において、私達も常に知識のアップデートが必要になります。

受け入れがたいですが、「自分のもっている知識が古い」ということを認知することが大切なのです。

旧日本軍が敗戦に追い込まれた原因の一つも過去の成功パターンをアップデートできなかったことが挙げられます。
真珠湾攻撃で空母機動部隊による攻撃が戦術レベルとして優位であると、自ら示したにも関わらず、戦艦大和に代表される大艦巨砲主義から抜け出すことができませんでした。

過去の積み上げてきた経験や成功パターンを捨てて、新しい情報や知識をインプットしなければ勝ち続けることはできません。

リベラルアーツを学ぶ方法は「人・本・旅」から

リベラルアーツを学ぶ上でキーワードになってくるのが「人・本・旅」です。

情報の鮮度、価値は1次情報>2次情報>3次情報の順番で語られることがあります。

  • 人に会いに行く───1.5次情報
  • 本は新聞の書評や古典を見て読む───2次情報
  • 旅は五感で学ぶ───1次情報

本は企画から出版されるまでに半年〜1年という時間が経過するので、実際に読者の手に届く頃には陳腐化されている可能性もあります。
だからこそ、歴史というヤスリにかけられ、長く読み継がれてきた本には価値があります。
特に古典は歴史を超えて読みつがれてきた人類の叡智であり、それを書き上げた著者の長年の経験にふれることができます。

「旅」もまた、百聞は一見に如かずという通り、自身の五感を通じて学ぶことができます。
人や本を通じて知ったとしても、最終的に旅などの体験でしか触れられない世界があります。

偉大な音楽家として知られるモーツァルトも生涯に渡り旅を通じて音楽活動をしてきました。
その土地で得た新しい刺激がアイディアやクリエイティブな発想につながったことでしょう。
ジョブズも若き頃にインドを放浪して禅に出会い、Appleの製品哲学にあるシンプルさを追求できたのかもしれません。

「人・本・旅」をバランス良く組み合わせることがリベラルアーツを学ぶ上で大切になると本書では述べられています。

【まとめ】イノベーションに必要な「相対化」は旅を通じて学べる

最後に僕の体験や気付きを踏まえて本書のまとめをします。

「自由」とは冒頭でもお伝えした通り「今、支配されている枠組みや思考からの開放」です。
つまり、目の前に存在する誰しも当たり前だと思うことに対して、一度引いて考えられるかがポイントです。

  • 労働は1日8時間、週5日間働くものなのか?
  • 食事は1日3回食べるものなのか?
  • モノを売るために広告をしないといけないのか?
  • モノを運ぶ上で一番大切なのは最短経路なのか?
  • 金利はプラスでないといけないのか?

そこに必要なのは相対化です。
言ってみればリベラルアーツとは「相対化する技術」でもあると筆者は述べています。

誰しも常識であると思っている世界のありようについて「なぜそうなのか?」「他の考え方や、やり方はないか?」と相対化することで、はじめて束縛されていた常識から自由になれるのです。

相対化するには、リベラルアーツ(多様な価値観、知識、知恵)が必要です。

本を読めば世の中には週4時間しか働くても十分に暮らせる人や、働き方が存在しているのを知ることができます。
スターバックスのTVCMは見たことがありませんが、常に人気です。

僕は2018年から1年間、世界一周の旅をしていました。
旅に出て3ヶ月目の頃でした、「どうしたら働かずにずっと世界旅行が継続できるだろう?」と本気でトルコのカッパドキアの絶景が広がるルーフトップカフェで考えたことがあります…笑

僕は「日本で働き詰めだった自分」と「誰からも束縛されず自由に旅している自分」を相対化したことで、両者のギャップに気がつきました。
その時、「絶対に帰国したら、もう束縛されるような働き方したくない」と決めて、始めたのが株式投資であり、今でいうFIRE的な生き方を目指したキッカケでした。

株式配当による不労所得が年間300〜400万円程度あれば、もう会社に雇われてライスワークをする必要ないと、一気に目指す方向性が見えました。

今ある枠組みや思考に対して違和感を持てるかはやはり、「人・本・旅」を通じて学ぶことができると、本書を読んであらためて感じました。

世界を変えるようなイノベーションは生み出せなくても、自分自身の働き方や生き方をアップデートするくらいはできます。

本書では、「人としてどう生きるか?」や「ポストコロナ禍における普遍的な価値」など興味深いトピックスが満載ですので、ぜひ続きをじっくりお読みいただき、これからの時代を生き抜くヒントを得てください。


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自由になるための技術 リベラルアーツ

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