【本要約】いままで起きたこと、これから起きること/周期を味方にする
今回ご紹介するのは「いままで起きたこと、これから起きること」(著者:高城剛)です。
個人的に高城さんの生き方、考え方はとても共感できて、動向についてベンチマークしている方の一人です。
そんな高城さんの久しぶりの新書にワクワクしながら手にとって読んでみました。
そして、情報量に圧倒されました。
参考文献も古今東西から幅広く集められており、まさに周期(サイクル)が存在するというのは自然の摂理であり、疑いようのない、また人間がどうこうコントロールできるようなものではないと感じます。
例えば一部の周期とそのスケール感を見てもこんな感じです。
- 太陽系:2億5000万年の周期で銀河系を一周
- 地球:10万年の周期で温暖化⇔寒冷化を繰り返す
- 文明:2000年の周期で東西文明が逆転
- 国家と歴史:80年の周期で栄枯盛衰
- 人:7 〜8年の周期で人生ステージが代わり体が変化
- 季節:1年の周期で春夏秋冬を繰り返す
- 生活:1週間の周期で労働と休日が人為的に設定された
人が普段意識できるサイクルは1日、1週間、1年の単位です。
- 1日:「もうお昼か…今日は何を食べようかな」
- 1週間:「あと1日頑張れば、明日から土日だ!」
- 1年間:「最近、寒くなってきたな。もうそろそろ冬かな」
人間は長くても100年しか生きられないので、歴史や宇宙規模の大きな周期を日頃意識できません。
しかし、「今自分が生きている時代、国家は大きな周期の中でどこなのか?次の波はどういうものなか?それはいつ訪れるのか?」などと考えられると、うまく波に乗り、それに向け準備することができます。
本書が伝えたいのは「周期を理解してサバイブする」というメッセージです。
全203ページの中から、僕が特に大切だと感じた部分を要約してみました。
いままで起きたこと、これから起きること。~「周期」で読み解く世界の未来~ (光文社新書)
この記事の目次
周期が複雑に絡み合うことで消費行動にも影響する
まずは馴染み深くイメージしやすところからご紹介します。
私達の消費行動もまた、様々な周期が複雑に絡み合っています。
季節という周期があるからこそ、夏物冬物と季節に合わせた洋服を購入します。
その周期を利用してメーカーは積極的なプロモーション・マーケティング活動を実施し、今では季節ごとに味を変えたビールもあるほどです。
またあらゆる商品、サービスにも周期は存在します。
- 導入期
- 成長期
- 成熟期
- 衰退期
iPhoneで言えば、導入期は初代iPhoneが発表された2007年〜2011年です。
成長期はiPhone5〜6Sが発表された2012年〜2015年。
ちなみにiPhone 6は約1億3,700万台というiPhone史上過去最高の売上台数を達成しました。
その後は成熟期が続いています。
ガラケーが衰退した時と同様に、iPhoneに代わる全く新しい商品が市場に投入され、その商品が成長期に入った段階で、iPhoneは衰退期へと突入することが予想されます。
現代の商品周期を作り出す導入期においてイノベーター、アーリーアダプター、インフルエンサーなどの存在が必要です。
また、季節の移り変わりは地軸の傾きと太陽の公転周期が関係しています。
周期は複雑な要素同士が絡み合うことで生まれ、周期同士もまた絡み合うことで、全く新しい周期が生まれます。
私達はそれらの複雑に絡み合ったいくつもの周期に影響を受けて生活をしていることになります。
「ヒーローズ・ジャーニー」に見る人生フェーズ・サイクル
本書では「ヒーローズ・ジャーニー」が紹介されています。
ヒーローズ・ジャーニーとは神話の研究の第一人者であったジョセフ・キャンベルによって発見された理論で、神話の中にあるひとつの流れのことを指します。
別名「神話の法則」とも呼ばれています。
その周期は以下の通りです。
- 平凡な日常
- 冒険への誘い
- 冒険を思いとどまる
- 師匠と出会う
- 敵、仲間との出会い
- 最大の敵との勝負(最大のチャレンジ)
- 勝利
- 故郷への帰路
- 復活
- 宝を持っての帰還
映画、ドラマ、漫画、セールスライティングなど、ストーリーを大切にするコンテンツは、このヒーローズ・ジャーニーを踏襲することで、人々に共感や感動を与えることができます。
例えばSTAR WARSのストーリーもこの周期をベースに作られています。
ドラゴンボール、ダイの大冒険、ONE PIECE、ハンター×ハンター、スラムダンクなど名作漫画も同様です。
このヒーローズ・ジャーニーは数ヶ月で完結することもあれば、長い人生を通じて動いている部分もあります。
漫画の主人公でなくても、自分は今どこのサイクルにいるのか?を意識するだけでも、次のサイクルへの行動意欲へと繋がり、よりドラマティックな人生が送れるのではないかと思います。
世界を動かす80年サイクルとは?
地政学者であるジョージ・フリードマンは著書「2020-2030 アメリカ大分裂:危機の地政学」で2025年から新たな第4サイクルに突入すると予測しました。
歴史をたどると、80年周期というものが存在します。
アメリカ史の一例をあげると
- 第1サイクル(1775〜1865年):アメリカ独立戦争・南北戦争
- 第2サイクル(1865〜1945年):南北戦争・第二次世界大戦終結
- 第3サイクル(1945年〜現在):第二次世界大戦終結
- 第4サイクル(2025年〜?):
このサイクルが生まれる背景にあるのは、政治体制の移り変わりや、経済状況などが複雑に絡んでいます。
例えば第二次世界大戦の原因の一つに世界恐慌があります。
不景気となり輸出規制の影響を受けた植民地を持たない国々が外に活路を見出したことが挙げられます。
現代でもロシア、北朝鮮など経済的に不安定な国家は、他国と有利に交渉するため軍事力を強化し周辺国と緊張と摩擦を繰り返しています。
日本も同様で気候変動による大飢饉、地震発生周期による巨大地震などいくつもの”組み込まれた周期”の中で歴史が動いてきました。
覇権国家の250年サイクルとは?
覇権国家もまた移り変わってきました。
世界最大級のヘッジファンド「ブリッジ・ウォーター・アソシエイツ」創設者のレイ・ダリオは16世紀以来、世界の貿易を牛耳ったオランダ、大英帝国、アメリカへと覇権国家が移り変わった時代を研究することで未来に役立つ法則を見出そうとした。引用元:P115
レイ・ダリオが見つけたのは国家の栄枯盛衰サイクルでした。
それによると250年周期で繁栄と衰退がみられるようです。
特に覇権国家は内部から崩壊する可能性が高く、現代のアメリカでも人種、政治思想、経済格差の広がりで分断され、巨額の軍事費などで経済状況が圧迫されています。
一方でアメリカは台頭する中国への牽制も強め、中国の通信機器最大手、HUAWEI(ファーウェイ)への経済制裁など、覇権国家同士の”重火器を使わない経済戦争”がサイバー空間を含めて繰り広げられています。
【まとめ】個人がこれからの時代をサバイブするために必要なこと
本書で重要なのは、激動する周期を読み解き、サバイブ力を身につけることにあります。
そして読んだ結論としては、個人的な答えは「大局観を持つ」です。
短期的な目先の利益ばかりを考えて視野を狭めると、その外で起こっている大きな流れに気が付かず、長期的に大きな機会損失となったり、チャンスを逃す事はよくあることです。
サーフィンで言えば良い波とタイミングを見極めテイクオフし、岸まで運んでもらう感覚。
ビッグウェーブとまではいかなくても、自分にとって丁度いい波のある場所に移動し、波に無理に逆らうことはせず、受け流す感覚───。
株式投資を例にとっても、成長が見込める中国に投資した方が良いのか、それともアメリカで良いのか頭をよぎりました。
国家の250年の栄枯盛衰サイクルを念頭におけば、アメリカ株だけで良いわけがなく、時代の流れが中国、インドに移行しているならばこそ分散投資に活路があると思います。
人生のステージによっても成長期であれば、成長できる環境に行けばいいし、守る必要があれば無理にリスクをとらない。
単に一つの周期だけで物事を判断してはいけないと本書を読んで感じました。
そして、どうやら大きな周期で見ると、遠くない未来、地球の寒冷化や覇権国家の移り変わりなど時代が大きく動くことが予想されます。
しかしこれらは、ちっぽけな一人の人間にはどうしようもないことです。
それよりも大切なのは、周期を味方につける事です。
特に自分ではコントロールできない国家や歴史、自然や宇宙規模の周期よりも、意思と行動をもって自分自身の人生の周期を作り出すことです。
例えばヒーローズ・ジャーニーです。
退屈な日常という周期の中にいると自覚できれば、「じゃ次の周期に移るタイミングだ、もっと冒険(挑戦)しよう!」と意識することで周期は加速するはずです。
また、何か困難な出来事があっても、「これは周期の中で起こるべくして起きたことだから、立ち向かい勝利(克服)しよう」と自分自身を鼓舞できます。
本書は、この世界には周期がいくつも存在して、複雑に絡みあい、また新たな周期が生まれるという知的好奇心をくすぐられる内容でした。
ぜひ続きは本書を実際に手にとってお読みください。